カテゴリ:空手



2024/12/17
セルフイメージの効用(No.101)
 小さい子であればあるほど徹底してポジティブな声かけをする。子どもたちと接する上で心がけていることです。▶極端な話、子どもは大して何も獲得していません。自他の区別や主観と客観の違いなどを意識することも難しい時期です。だからこそ心も身体も柔らかくてどんな風にでも変化できるということ。▶一方で、子どもたちには生まれもった資質のようなものも見て取れます。どの子も当然「得意・不得意」の分野があります。どちらか一方だけという子どもはいません。そんな彼ら彼女らに対して意識していることは、とにかく早い段階で「得意」な分野を見つけてあげて、何度も声にだして伝え続けること。空手ならパンチでも蹴りでもなんでもいい。大きな声での号令でも、準備の速さでもいいんです。そんなコミュニケーションをとることで、子どもたち一人ひとりが自分自身に対してポジティブなセルフイメージを持てるようになってもらいたいと考えています。技術の上達はまだまだ先でいいんです。▶「好きこそ物の上手なれ」。自分によいイメージを持てさえすればあとは大抵なんとかなります。柔らかい子どもにこそ、大人のポジティブな言葉は響くと確信しています。【終】
2024/11/12
ないのに面白くできる(No.96)
 子どもというのは、何も「ないのに面白くできる」能力に長けています。▶見馴れた風景として、空手の稽古場に子どもがひとりふたりと集まってくるにつれて走り回ったり、寝ころんだりしながら身体をフルに使って面白がっている様子があります。じゃれあったり、ふざけあったりという表現になるでしょうか。▶子どもの苦手な事のひとつとして「退屈すること」があると思います(多分本人にその自覚はないと思いますが...)。だからその場に仲間が増えてくると、だんだんと何か面白そうなことを見つけては拡げていくんだと思います。あくまでも自然に、その場に何もないのにです。(武道の稽古場には大抵何もありません。空間があるだけです。)▶子どもたちはその場に「空間と人」があれば「退屈」から「面白い」に簡単に変えられるのでしょう。モノに溢れた現代においてこの才能には感心させられます。これを一言でいうとすれば「コミュニケーションを面白がっている」ということでしょうか。そうであれば、道衣は着用するものの何ももたず相手と向き合うフルコンタクト空手というのもどこか本質的な部分で繋がっている気がしてきました。【終】
2024/10/29
試合後の子どもたちに(No.94)
 週末に「全日本ジュニア空手道選手権大会」がありました。当道場から出場した8名の選手たち。緊張する中で対戦相手に向かっていったその勇気を称えます。▶ジュニアの試合は技術レベルと体重により複数クラスに分かれてのトーナメント戦。試合時間は1分か1分30秒で延長戦も原則1分の1回。レベルも体重も近い選手同士が対戦することもあり、試合の多くが明確な優劣がつきにくいなかでの判定決着になります。このような競技特性を前提にした上で、各人が目標に向かって決して楽とは言えない稽古を続け、当日は高まる緊張感の中で独りで相手に向かっていきます。その無我夢中の数分間後の勝敗確定。小さな子どもたちにとって「なぜ勝ったのか?なぜ負けたのか?」判然としないままコートを後にすることが多いのではといつも思います。▶正直言うと、精一杯頑張ったのに敗れてしまった子どもたちをどんな言葉で労ってあげればよいか迷うことがあります。指導者として適切に子どもたちの気持ちに向き合えているかという自問自答も続きます。ただそれでも試合後数時間もたてば、いつもの笑顔に戻って帰宅の途につく子どもたちを見ていつも救われる気もしています。【終】
2024/10/22
基本形と立ち方(No.93)
 日々の稽古メニューの中で大切にしている「基本形」と「立ち方」について少し触れておきます。▶「基本形」は言うまでもなく空手の動きのすべての基本になります。中でも「立ち方」は最も重要です。そもそも人類が進化によって獲得した直立二足歩行は、例えば四足歩行と比較するとかなり不安定な状態です。その状態で一定の安定した姿勢を維持すること自体が難しいことになります。さらに組手においては「蹴り」を中心として相手と対峙していくことになるので、より身体の安定性が必要になってきます。そのために考え抜かれた形を何度も何度も繰り返すことによって身体に染み込ませていくのがこの稽古の目的です。▶子どもたちにとってのこの稽古は、ひょっとするといつまでたっても同じ動きばかりでつまらなく感じるかもしれません。集中力も続かなくなることもあるでしょう。それでも大切なことは大切です。よく「姿勢の乱れは心の乱れ」と言われることがありますが、「基本形」における「立ち方」の指導は、目に見えにくいそのあたりの事も念頭に置きながら丁寧に行っているところです。【終】
2024/10/08
継続と実感(No.91)
 先週から千里道場管轄の各教室において「昇級昇段審査会」を実施中。幼年部および少年部では年長~小学6年生までの練習生たちが元気に日頃の稽古の成果を披露しています。▶子どもの昇級や昇段に関して大切にしていることがあります。それは幼少期において何かを「継続することの価値」を「身をもって実感」する経験を通じて自信をつけていってもらいたいということです。▶正直、「体格、性格、運動センス」など生まれもった特徴は様々です。それらを十分に理解しているつもりです。その上で子どもたちが年2回の審査会を目標に、それぞれの小さな課題に継続的にコツコツと取り組んでいく姿勢に価値をおいています。もちろんそこには、勝ち負けや他者との比較はありません。あくまでも自分自身の成長を自分自身の身体で実感して欲しいという思いを込めています。数多ある習い事の一つとして、幼少期における空手修行という時間軸の流れの中でこれからも子どもたちを応援していきます。【終】
2024/09/17
子どもの身体的な可能性(NO.88)
 学校では二学期が始まって3週間程が経過し、多くの子どもたちは学校中心の生活リズムに馴染んできているように見受けられます。空手教室の方では例年この時期から子どもたちの体験入会が増えてきます。今年も当道場および担当スポーツクラブにおいて数名の体験者に初めての空手に触れてもらっているところです。▶就学前~小学校低学年くらいの子どもたちがメインの体験者。最初は緊張の面持ちで全体的に固い感じがしますが、稽古メニューが進むにしたがって大抵は上手に動き始めます。基本の形や移動稽古など時折複雑な動きもありますが、見よう見まねでだんだんと先輩の動きに同期し始めていきます。▶彼ら彼女らにはまだまだ身体の使い方に癖が少なく、その場での緊張さえほぐれたらあくまでも自然体に近い状態の小さな身体は本当に柔軟性に富んで映り、空手に限らずこれからの可能性を感じます。子どもたちが自らの身体を自在に操って自分らしい表現を身につけられることを願うとともに、私にやれることがあれば精一杯サポートしたいと思う日が続いています。【終】
2024/09/10
蹴るという自由(No.87)
 何かを蹴る。たいていの人は物心ついた頃にはもうそんなことはほとんどしなくなります。武道やスポーツでもしない限りは。▶当道場では空手を始める子どもたちには1ヶ月の体験入会をしてもらいます。すると初めて稽古に参加した子どもに共通してある傾向が見られます。それは先輩の身体やミットを蹴ってもらう場面によく現れます。「蹴ってみよう!」というと半分くらいの子は少し躊躇します。多分、周囲から何かを「蹴っちゃダメ」とよく言われているからだと思います。当然の反応ですね。ところが「大丈夫だから、思いっきり蹴ってみて!」と伝えて、実際に蹴り始めるとニコニコしてきて楽しそうに蹴り始めます。この瞬間をいつも清々しく感じています。▶普段からしてはいけないと思い込んでいることをしていいと言われること。そして実際にやってみること。特に人や物を「蹴る」という行為から自分自身に伝わる感じを体感するという経験。なんともいえない自由や解放感を味わってるのではないかなと勝手に想像しています。実際に入会するかどうかはご縁の問題なのですが、個人的には体験に来てくれた子どもたちのこういった反応に出会えた瞬間がたまりません。【終】
2024/09/03
一人ひとりの3試合(No.86)
 9/1(日)にエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)にてチャレンジマッチVol.3が開催されました。当道場管轄の教室からは過去最大の27名がエントリーし、ひとり3試合を最後まで戦い抜きました。まずは勇敢に挑んだ選手たちみんなの頑張りを称えます。そしてその挑戦を温かく見守りつつしっかり支えてくださった保護者の皆様に感謝いたします。▶試合は1~3部に分けた3部制で実施されました。朝一番の第1部の出場選手は経験が浅めの子が多いリーグ。受付開始時間以降、試合会場は選手本人は当然として、保護者も含め朝から不安感や緊張感が漂う空気を感じました。▶そんな状況の中で10:00から試合が開始され、予定通りに対戦が進むにつれ沢山の声援や拍手により会場の雰囲気もだんだんと熱気に包まれていきました。気付いてみればいつもの試合会場の雰囲気に達していたように思います。▶沢山の子どもたちが道場の仲間や保護者に励まされながら一人で相手に向かっていった「一人ひとりの3試合」。きっと彼ら彼女らに小さな自信をもたらしたはずです。また次に向かってみんなで一緒にがんばりましょう。【終】
2024/08/27
敵を知り、己を…(No.85)
 今週から多くの学校で2学期がスタートしています。当道場でも先週からお盆休みが明けて稽古を再開しており、たくさんの子どもたちがいつも通りの動きを取り戻してきています。▶さて、いよいよ9/1(日)はチャレンジマッチVol.3です。今年4月に始まったこの交流大会もすでに3回目の開催になります。今回から学年、体格、経験など複数の観点でみて近いレベルの選手4名による総当たりのリーグ戦形式になります。これにより、同一リーグに属する他の3選手の試合をよく見て参考にすることが増えてくると思われます。武道全般ではこのことを「見取り稽古」といいます。自分以外の選手の試合や稽古をよく観察してその技を学んだり、癖を盗んだりしながら技術力の向上を目指す行為です。▶中国古典の孫子の兵法に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という有名な言葉があります。まだまだ小さな子どもたちですが、緊張やプレッシャーを感じながらも目の前に起こる現実にひとつひとつ立ち向かっていく経験をしていくことで、未来を生き抜くタフな精神力を身につけていって欲しいと思っています。みんなの勇気あるチャレンジを応援しています。【終】
2024/08/06
初めての試合に向けて(Vol.83)
 9/1(日)に開催される「チャレンジマッチVol.3」。今年度より実施されているシリーズの第3回目となります。この大会は真正会所属のジュニア選手が複数の試合を経験しながら互いに切磋琢磨していくことで、空手技術の向上をはかることを目的としたものです。▶千里道場管轄では回を重ねる毎に参加選手が増えてきており、今回も総計で25名を越えてのエントリーがありました。今回の参加選手の特徴としては入会6ヶ月未満の白帯でのエントリーがかなり多いところです。当然、彼ら彼女らは空手の技術面はもちろんのこと体力面や精神面においてもまだまだ未熟です。ただし、日々の稽古においては限られた時間の中で元気に楽しく精一杯頑張っている子どもたちばかりです。そんな小さな選手たちが普段とは違う場所で、初めて見る相手に向かっていく事になるのが今大会です。すべてはみんなにとってきっとよい経験になると思います。▶当道場では、子どもたち一人ひとりの「何かに向かっていくプロセス」を特に大切にしています。保護者の方々はぜひ温かく子どもたちのチャレンジを見守ってあげて欲しいと思っています。【終】

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